水大辞典

知っているようで意外と知らない「水」のことが分かる! 水大事典。「水とからだの関係」や「硬水と軟水の違い」など、水のいろいろが満載です。
監修:東京大学総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座

氷・水・水蒸気…水の三態

水分子の構造

水の分子は、化学記号からわかるとおり水素原子(H)2つと酸素原子(O)1つが結合してできていますが、この水分子1つでは液体になりません。水という液体になるためには、水分子がたくさん連なることが必要です。物質を構成する分子と分子がつながるための力にはいろいろな種類がありますが、水分子の場合は酸素側がマイナスの電荷、水素側がプラスの電荷を持つようになり、いわば磁石のような働きを持っているために、正負で引き合う電気的な力によって結合します(水素結合)。この水素結合により、水分子間がつながり、水分子の集合(水クラスター)が形成されます。常温の水では、5〜6個から十数個の分子がクラスタを形成しています。

水分子の構造

水分子の構造

水の三態・液体=水

水が液体の状態であるのは、1気圧のもとでは、その温度が0.00℃〜99.974℃までの間です。
(元々、水の沸点は沸点を100℃と決めたが、「1℃」の定義が見直されたため、水の沸点は現在厳密には99.974度に定義されている。)

水分子は、いくつかが集まり、集団で1つの固まりになったり、それがまた崩れたりしながら、でたらめな方向に向かって自由に運動しています。水が様々な形に変化できるのは、分子がこのように自由に動いているためです。外から熱を加えていくと、この運動が激しくなり、水分子は集合した固まりでいられなくなってきます。

水の三態・気体=水蒸気

水は99.974℃(1気圧下)に達すると沸騰し、分子の集団はバラバラになります。
水分子は激しく動き、猛烈なスピードで空間を飛び回ることになります。
水蒸気という気体は目に見えません。沸いたやかんの口から出る白い湯気は、水蒸気が周囲の空気で冷やされて水の粒に戻った状態のもの。やかんの口から出る透明な気体が水蒸気で、白い湯気の部分は液体です。

水の三態・固体=氷

水が0.00℃以下(1気圧下)になると、運動するための熱エネルギーが極端に低く、水分子は動きをとめて互いに結合します。水分子は、曲がった形をしているために、分子同士はすきまが多い形でしか結合できません。
そのために、分子と分子の間にすきまができて距離があき、その分体積が増えることになります。水を凍らせるとかさが増えるのは、そのためなのです(増える量は、約10パーセント)。普通の液体は固体になると密度があがり、体積は小さくなります。固体になると体積が増えるのは、他の多くの物質とは異なる水の性質です。

水の不思議・自然現象編

自然現象の中に見ることのできる、水の特異な性質を考えてみましょう。

1)
岩石の風化・霜柱
→「氷になると体積が増える」

冬の風物詩・霜柱は、ごく簡単に言えば地中の水分が凍って体積が増え、地表の土をおしのけて出たもの。また岩石の風化にも水は大きく関わっています。たとえば、岩石の亀裂にしみこんでいた水が凍結し、体積を増し、その力で亀裂を押し広げます。そしてこれを繰り返すうちについに岩石が割れるのです。

水の不思議・暮らし編

つぎに、暮らしの中で見ることのできる水の特徴について考察します。

1)
スケートが楽しめる
→圧力をかけると、氷が溶ける

スケート靴をはくと、なぜあんなに滑りやすくなるのでしょうか。それは、スケート靴の刃と氷のあいだに水があり、その水が潤滑剤の役割をしているからです。氷は溶けるものなので、水があるのは当然だと感じるかもしれませんが、氷が自然に、気温が高いために溶けて水になっているのであれば、スケートリンク中が水びたしになるはずです。スケートリンクの表面の氷は、人間のはいたスケート靴の刃が上に乗ったときには水になりますが、人間が通過してしまうとふたたび氷に戻ります。これも水の特質の一つです。 (なお、最近の研究ではその他の要因もわかってきています。)

水の三相図

水の三相図

【参考文献】
播磨裕・岡野正義・山崎岳 他/共著 『水の総合科学』 三共出版
平澤猛男/著 『水は永遠の友』 研成社
石原信次/著 『知っておきたい水のすべて』 インデックス・コミュニケーションズ
上平恒/著 『水とはなにか』 講談社
左巻健男/著 『水と空気の100不思議』 東京書籍
稲場秀明/著 『氷はなぜ水に浮かぶのか』 丸善
中川鶴太郎/文 村田道紀/絵 『氷・水・水じょう気』 岩波書店
ウォルター・ウィック/著 『ひとしずくの水』 あすなろ書房
『学研の観察・実験シリーズ 空気中の水の変化』 学習研究社
高橋裕 他/編 『水の百科事典』 丸善 1997
長倉三郎 他/編 『岩波理化学辞典5版』 岩波書店

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