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2023/11/13

【第45回サントリー地域文化賞】多様な芸能の復興を通して伝統の祭の活性化に取り組む「和歌祭保存会」(和歌山県和歌山市)

和歌祭保存会紀州東照宮創祀以来継承する大祭渡御行列(和歌祭)の恒久的な保存と顕彰をするとともに、多方面への啓発を目的として設立されたのが「和歌祭保存会」です。400年以上の伝統を誇る祭で披露される多様な芸能を復興させ、祭の歴史的・文化的価値を高めたことや、地元大学と協力した体制づくりなど、祭を活性化させ、永続させるための様々な取組みが高く評価され、「第45回サントリー地域文化賞」を受賞しました。


■「サントリー地域文化賞」とは?
贈呈式の様子

※贈呈式の様子

サントリー文化財団が、地域文化の発展に貢献した団体や個人を顕彰する「サントリー地域文化賞」。全国各地で展開されている芸術、文学、伝統の保存・継承、衣食住での文化創出、環境美化、国際交流などの活動を通じて、地域の文化向上と活性化に貢献した団体、個人に贈呈しています。1979年の創設以来、40年以上にわたり、全国の地域文化活動を対象に評価を行い、原則として毎年5件の活動が選定されます。

■紀州東照宮の大祭の渡御「和歌祭」
紀州東照宮での神輿おろし

※紀州東照宮での神輿おろし(2007年)

和歌山県北部に位置する和歌浦は、万葉集にも詠われた風光明媚な地として知られています。紀州徳川家初代当主・徳川頼宣は、和歌浦に父・家康を祀る東照宮を1621年に創建し、翌1622年に和歌祭を創始しました。祭では約1,000人もの民衆が神輿や山車を引き、40種目以上の芸能を披露しながら街中を練り歩きます。それぞれの芸能は、城下町民による「株」という組織が担い、明治以降も旧藩士らが出資して和歌村の人たちが技芸を代々継承しましたが、資金面の問題で祭は完全に途絶え、のちに一部再開はされましたが、1984年を最後に再び中断したそうです。

■多様な芸能の復興を通して伝統の祭の活性化に取り組む「和歌祭保存会」
唐船の前で御舟歌の披露

※唐船の前で御舟歌の披露(2017年)

「和歌祭保存会」は1985年、和歌浦の住民を中心に結成。当時10程度存続していた株の名簿を作成して株同士が連携し、1990年に祭を再開しました。1999年には、保存会の若手有志からなる青年部(現在の実行委員会)を結成し、存続していた株の親方に教わりながら芸能の復興にも取り組みます。芸能は、和歌山大学協力のもと、地域住民中心でできるかたちを目指し、2010年「唐船(とうぶね)」で歌われる「御舟歌(おふなうた)」復興の際には、音程を女性も一緒に歌えるよう調整したり、和歌浦地区でワークショップを開催したりして、担い手の確保にも力を入れています。
行列に復活した「唐人」

※行列に復活した「唐人」(2017年)

御舟歌復興の反響は大きく、他の株からも技芸を復興させ、歴史的価値を高めたいという声が上がり、2012年には「餅搗踊(もちつきおどり)」のお囃子が復興、2017年には和歌山大学の研究プロジェクトの一環として352年ぶりに「唐人(とうじん)」が復興されました。唐人は当時日本に来た外国人を模したものということで、装束の考証から和歌山大学の留学生が関わり、その後も唐人の株は和歌山大学が継承。2021年には、地元企業や小学校の運動部が新たな株を引き受け、3種目が復興されるなど、祭の担い手の輪は着実に広がっています。

芸能の復興を通じて祭を活性化させた原動力は、祭を続けたいと願う地域の人たちの思いです。祭の永続に向けて、先人たちの思いをつなぎ、地域内外の力を合わせる役割が「和歌祭保存会」に期待されています。

これからもサントリーは、日本の地域文化を応援していきます。

▼関連リンク
サントリー文化財団「サントリー地域文化賞」のサイト
第45回「サントリー地域文化賞」決定(ニュースリリース)
「和歌祭」のサイト(外部サイトにリンクします)

タグ サントリー地域文化賞
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