水大辞典

知っているようで意外と知らない「水」のことが分かる! 水大事典。「水とからだの関係」や「硬水と軟水の違い」など、水のいろいろが満載です。
監修:東京大学総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座

水をコントロールする技術

運河の技術〜水の高低差を克服するために

運河とは、陸地を削って造られた人工的な水路のことで、自家用の手漕ぎボートで往来する細い水路から、海と海を結ぶ国際運河まで、規模も用途もさまざまです。ただ、いずれの場合も共通するのは、水路は平坦なところばかりではないということです。安全で効率的な水運のために、いかに水平を保てるか、いかに水流の速さをゆるやかにできるか、いかに水深を確保できるかが技術的な課題になります。
高低差を克服するしくみは、おもに次の3つがあり、どの技術も、産業革命で運河が急速に発展したイギリスで考案されました。

1)
ロック(閘門・こうもん)方式

船を水門(=ロック)と水門で区切ったスペース、閘室(こうしつ)の中に閉じ込めて、スペース内の水の量を増やしたり、減らしたりすることで水位が上下します。水位が低いほうから上がるときは、閘門内に船を閉じ込めたあと、水を入れて、水位が高いほうと閘門内の水位を同じにし、逆に、下るときは、閘門内に閉じ込めたあと、閘門内の水を抜いてやれば水位が下がります。
太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河が代表的です。閘室になる海抜26メートルの人造湖ガトゥン湖が運河の最高地点になるため、太平洋側からも大西洋側からもロックで上り下りすることになります。この形式は古いものの、多くの観光運河で残されており、ロック越えが観光の目玉になっています。

ロックのしくみ

ロックのしくみ

カウンター・ウエイト式、ストレピ・ティウのリフト

2002年に完成した、ベルギーのサントル運河(中央運河)の大規模な最新鋭のカウンター・ウエイト式リフト。水位の高低差73メートルを40分かけて垂直に昇降します。水圧式がシーソーなら、カウンター・ウエイト式は滑車の原理で動いています。

スエズ運河

1869年に開通した、紅海と地中海を結ぶ水平式の海洋運河。全長162キロメートル。年間1万5000隻もの船が往来する、世界の海の大動脈です。かつてロンドン・シンガポール間は、喜望峰回りで航路2万4500キロメートルで100日以上かかっていましたが、運河の開通によって航路1万5000キロメートル約40日にまで短縮されました。

パナマ運河

パナマ運河は幅32メートル、深さ12メートルの船が通過できる、全長80キロメートルの大西洋と太平洋をつなぐ国際運河です。年間1万3000〜1万4000隻が通航していて、アジアとアメリカ東海岸を行き来する船が大きな割合を占めます。
太平洋側の水位が24センチメートル高いためロック式が採用され、標高26メートルに設けられた人造湖ガトゥン湖まで両サイドからロックでのぼります。 2001年にゲイラード水道は幅192メートルに拡張され、対面運行が可能になったため運行能力が20パーセントアップしたといわれています。
パナマ運河の建設は1881年に開始されましたが、マラリアや黄熱病の流行に苦しめられ、一旦中断されました。1904年に再度着工し、1914年に完成しました。

パナマ運河

パナマ運河

スエズ運河とパナマ運河

スエズ運河とパナマ運河

【参考文献】
NHKテクノパワープロジェクト/著 『巨大建設の世界1水圧と闘うダム・運河』 日本放送出版協会
E・C・ピルー/著 古草秀子/訳 『水の自然誌』 河出書房新社
清水靖夫/著 『世界情報地図2005年度版』 日本文芸社
(社)日本船主協会
(http://www.jsanet.or.jp/index.html)
五洋建設株式会社「スエズ運河改修プロジェクト」
(http://www.penta-ocean.co.jp/
suez_story/top.html)
日本貿易振興機構(JETRO)カイロ・センター「第5の外貨収入源を模索」
(社)生活文化総合研究所「イラク戦争とその波紋(片倉邦雄)」

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