知っているようで意外と知らない「水」のことが分かる! 水大事典。「水とからだの関係」や「硬水と軟水の違い」など、水のいろいろが満載です。
監修:東京大学総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座
海水には80種類以上の元素が溶け込んでいます。
海水中の主要元素を記すと、
水素、酸素、塩素、ナトリウム、マグネシウム、硫黄、窒素、カルシウム、カリウム
となります。同様に人間の体液の主要元素を記すと、水素、酸素、炭素、窒素、ナトリウム、カルシウム、リン、硫黄、カリウム、塩素、マグネシウムとなり、海水の成分と良く似ていることがわかります。生物が海から生まれたと考えられるゆえんです。
河川は、陸から海へさまざまな物質を運ぶパイプのようなものです。地殻を構成する岩石成分や、人間の活動から出された化学物質を溶かしこみ、土壌の微小な粒をそのまま混ぜ込んで海へと運んでいます。
地上に降ってきた雨水は、土の表面からしみ込んで、徐々に地下へ浸透していきます。土壌内に入り込んだ水は、ゆっくりと浸透しながら土壌をうるおし、やがて地下水面に到達します。その後湧水として湧き出たり、井戸水としてくみ上げられたりします。
水は地下へ至る過程で、主に土壌や地層といった天然のろ過装置によってろ過されます。
雨水は、空気中のちりやほこりなどの粒状物質、硫黄・窒素酸化物・炭酸などの溶存物質を含み、弱酸性になっています。地面に落ちた雨水は、土壌の中の大小さまざまなすき間を通るうちに、ちりやほこりはろ過されて取り除かれます。溶存物質は土壌物の微生物による摂取、植物による吸収、土壌への吸着などにより取り除かれます。その後、土壌の下にある砂礫層に浸透して通過する際に、土壌を通過した微小な粒子はさらにろ過されます。
このようなプロセスを経て、水は浄化され、地下水脈に到着します。また、地下水が最も長い時間とどまっている岩石帯からは、水を媒介とした化学的風化作用により、岩石から溶出したさまざまなミネラル分を供給され、これがミネラルウォーターと呼ばれる水になるのです。
地下水
地下水を見る試み「GETFLLOWS(ゲットフローズ)」
サントリーは、様々な専門家と協働で、地下の水の流れを知り、シミュレーションするためのモデリングシステム「GETFLLOWS」の開発を進めています。
夫々の環境における相応しい水の使い方や、どのような森林整備が未来の地下水のためにより良いのかなどを考えるための大きな道標となります。
雨水は海から蒸発した水蒸気が凝結したものですが、大気中の二酸化炭素やその他の大気成分、ちりなどをとりこんで、pH(※2)5.6〜5.7の弱い酸性になっています。
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※2:
ピーエイチ。水の酸性・中性・アルカリ性をあらわす。pH1は強い酸性、pH14が強いアルカリ性、その中間のpH7は中性ということになる。
これに工場や車の排気ガスから出される硫黄酸化物や窒素化合物によってもたらされる硫酸や硝酸が溶けると、雨はさらに強い酸性を示すようになります。一般にpH5.6以下の雨を酸性雨と呼んでいます。酸性雨による影響として、森林の立ち枯れ、湖沼の酸性化、土壌の酸性化、建造物の劣化などが問題になっています。
【参考文献】
北野康/著 『新版 水の科学』 日本放送出版協会
小倉紀雄・一國雅己/共著 『環境化学』 裳華房
J.Eアンドリューズ P.ブリンゴリム T.D.ジッケルズ P.S.リス B.J.リード/著 渡辺正/訳 『地球環境化学入門』 シュプリンガー・フェアラーク東京
有田正光/編著 池田裕一・中井正則・中村由行・道奥康治・村上和男/著 『水圏の環境』 東京電機大学出版局
角皆静男・乗木新一郎/著 西村雅吉/編著 『海洋化学』 産業図書株式会社
柳哲雄/著 『海の科学 −海洋学入門 第2版』 恒星社厚生閣
W.S.ブロッカー/著 新妻信明/訳 『海洋科学入門』東京大学出版