知っているようで意外と知らない「水」のことが分かる! 水大事典。「水とからだの関係」や「硬水と軟水の違い」など、水のいろいろが満載です。
監修:東京大学総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座
貴重な水資源を守るために、水を汚さないための工夫も必要です。
水環境の主要な汚染源の一つに各家庭から出る排水があります。生活雑排水も水質汚染において無視できない存在となっています。屎尿と異なり、生活雑排水(※1)からの汚染負荷は工夫すれば減らすこともできます。
浄化槽や下水処理場の処理能力には限界があるので、家庭からの負荷を減らすことも大切です。
-
※1:
生活雑排水対策推進指導指針によると、「生活排水」とは、「し尿と日常生活に伴って排出される台所、洗濯、風呂等からの排水」をいい、「生活雑排水」とは、「生活排水のうち、し尿を除くもの」とされています。
生活雑排水は台所、洗濯、風呂などから排出される水をいいますが、なかでも特に水を汚しているのが台所の排水です。台所排水には、食品の食べ残しや残りかすが含まれ(有機物)、水中の微生物はこの有機物を餌にしてエネルギーを得ています。その際、水中の酸素が使われるため、有機物が多いほど、酸素使用量も増えることになります。場合によっては水中の酸素が欠乏し、魚などの生物が棲めない状態になってしまいます。
この有機物による汚染の程度を示す指標として、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand: BOD)(※2)などが用いられます(水の汚れが大きいほど、BOD値は高くなる)。
-
※2:
同様に有機物の汚濁をしめす指標に化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand: COD)などがある。水質汚濁防止法によって河川に流入する排水についてはBODで、海、湖に流入する排水についてはCODで規制されている。
コイやフナなどの魚が棲める水質のBOD値は5ミリグラム/リットル以下、ヤマメやイワナなどの魚が棲める水質のBOD値は2ミリグラム/リットル以下とされています。これに対し、たとえばラーメン汁のBOD値は約27000ミリグラム/リットル、みそ汁のBODは約39000ミリグラム/リットルです。もし、汚れた水をそのまま川に流した場合、魚が棲める水質になるまで薄めるには、膨大な量の水が必要になります。
<台所から出る汚水別・魚が棲める水質に戻すために必要な水量>
みそ汁1杯 (200ミリリットル) |
1600リットル(浴槽8杯分) |
---|---|
牛乳コップ1杯 (180ミリリットル) |
2800リットル(浴槽14杯分) |
天ぷら油 (500ミリリットル) |
150000リットル(浴槽750杯分) |
ラーメンの汁 (300ミリリットル) |
1600リットル(浴槽8杯分) |
-
※ 浴槽1杯=200リットルで表示
生活排水による水質汚濁を防止し、水源をきれいに保つためには、私たち1人ひとりの日々の心がけが不可欠であることは、いうまでもありません。
東京都では、家庭で実践できる生活排水対策として、「雑排水の汚濁負荷削減指針」を挙げています(以下に引用)。生活排水によるBOD負荷量は、一人ひとりの心がけしだいで、大きく減らすことも可能です。
【参考文献】
『平成17年度 日本の水資源』 国土交通省
国土交通省ホームページ
(http://www.mlit.go.jp/)
東京都水道局ホームページ
(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/)
東京都環境局ホームページ
(http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/)
国土交通省関東地方整備局
(http://www.ktr.mlit.go.jp/index.htm)
都築俊文・伊藤八十男・上田祥久/共著 『水と水質汚染』 三共出版
山本忠煕/著 『不思議な水の科学と生活』 文芸社
北野大/監修 『知っているようで知らない「水」の不思議』 大和書房
『環境問題総合データブック2004年版』 生活情報センター
『女性の暮らしと生活意識データ集2005年版』 生活情報センター
東京都水道局ホームページ〜PR情報〜パンフレット〜節水の習慣:上手に使って大切な水
(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/
water/pp/syuukan/index.html)