【第44回サントリー地域文化賞】鋳物作りの作業唄をルーツにした民謡「弥栄節」を保存・継承する「弥栄節(やがえぶし)保存会」(富山県・高岡市)
富山県高岡市で伝承される民謡「弥栄節(やがえぶし)」を、保存・継承する取り組みを行っている「弥栄節保存会」が、第44回サントリー地域文化賞を受賞しました。
■「サントリー地域文化賞」とは?
※2022年の贈呈式の様子
サントリー文化財団が、地域文化の発展に貢献した団体や個人を顕彰する「サントリー地域文化賞」。音楽、演劇、美術、歴史・伝統継承、国際交流、コミュニティ活動などを対象に毎年評価・顕彰を行い、1979年の創設以来、本年度の受賞者を加えると235件を顕彰、受賞者は全都道府県にわたっています。44回目となる今回は、高岡市の「弥栄節保存会」を合わせた5つの団体が受賞。富山県からの受賞は、2014年の立山町「布橋灌頂会実行委員会」以来となりました。
■「弥栄節保存会」の取り組み
およそ400年の歴史を持つ、鋳物の産地・富山県高岡市。「弥栄節」は、高岡鋳物作りの際、夜通し行われる過酷な作業「たたら踏み」で、疲れる心身を元気づけ仲間と息を合わせるために工員たちが歌った作業唄をルーツに持ちます。大正末期に一度姿を消しましたが、昭和に入り地元産業を支えた唄の喪失を惜しむ有志の熱意で復活。1975年に「弥栄節保存会」が設立され、現在は唄と踊りを通じた地域住民の交流促進や、次世代育成を中心とした保存・継承活動を展開しています。
毎年高岡市金屋町で催される、加賀前田家二代目当主の前田利長の命日に遺徳を偲ぶ祭り「御印祭」では、「弥栄節」を披露。前夜祭では、町の目抜き通りを踊りながら練り歩く「町流し」(上記画像)が、本祭では利長の墓前で「奉納踊り」が行われます。町流しには、市内全域から約1,000人の踊り子が参加するほか、県内各地から多数の見物客が訪れます。コロナ禍で御印祭が中止となった際も、「リモート町流し」を行い、オンラインでつながった地域住民で弥栄節を踊りました。
また次世代育成の活動も活発に行われており、地域の小・中学生が運動会や文化祭で踊りを披露する様子は、この地域の恒例となっています。写真は、高岡西部中学校の学校祭で披露された「箏演奏・弥栄節踊り」(2021年)。
小・中学生への指導や、保育士・教諭らを対象とした講習会や指導用映像資料の作成・寄贈などを行っています。
©TCN
こちらは、川原小学校での弥栄節の踊り指導の様子(2022年)。ほかにも「子どもたちにも唄いやすくしてほしい」「琴を使って演奏したい」といったリクエストに応えてアレンジを施すなど、時代の変化に合わせて形を変えつつ、住民自ら保存・継承する取り組みが高く評価され、今回の受賞に至りました。
「この文化を守ることは、高岡の町を守ることと同じと考えている」と話す保存会会長の藤田益一氏。高岡の繁栄を伝える唄として、弥栄節はこれからも末永く唄い継がれていくでしょう。
これからもサントリーは地域文化の発展を応援していきます!