【第44回サントリー地域文化賞】「会津の漆器を会津産の漆でつくる」ため開墾と土壌改良から取り組んだ漆文化の再興「はるなか」(福島県・会津若松市)
福島県の西部に位置する会津地方は、古くから自然の豊かな土地だったことから、ここ会津を桜の名所、漆の里にしようと里山づくりに取り組んでいるのが、認定NPO法人 「はるなか」です。桜や漆の植栽や、それらを維持管理する里山づくりに加え、若手作家によるぐい呑みつくりなど、地域の伝統工芸である会津塗を盛り立てている点が高く評価され、今回「第44回サントリー地域文化賞」を受賞しました!
■「サントリー地域文化賞」とは?
※2022年の贈呈式 の様子
サントリー文化財団が、地域文化の発展に貢献した団体や個人を顕彰する「サントリー地域文化賞」。全国の地域文化活動の発展・向上を応援したいという想いから、音楽、美術、歴史・伝統継承、国際交流などの活動を対象に、1979年の創設以来40年以上にわたり、全国の地域文化活動を対象に評価、顕彰を行っています。44回目となる今年は、全国の5団体が受賞されました。
■「桜の名所、漆の里"会津"」実現を目指す認定NPO法人「はるなか」
福島県の西部に位置し、越後山脈と奥羽山脈に挟まれた内陸の地域の会津地方。古くから自然の豊かな土地でした。そんな"会津"を「桜の名所、漆の里」にしようと里山づくりに取り組んでいるのが、認定NPO法人「はるなか」です。
高校時代に生物部で自然保護を学んだ、認定NPO法人「はるなか」の現理事長・佐藤光信(みつのぶ)さんの「会津の自然を守りたい」という熱意に打たれた仲間たちが集い、2004年12月に「はるなか」が創設されました。「はるなか」という名は、会津藩で大老をつとめ、天明の大飢饉を乗り越えて地場産業や特産品の基礎をつくった田中玄宰(たなか はるなか・1748-1808)に由来しています。
「はるなか」は、「桜」、「漆」、「木綿・藍」、「自然環境」、「地域活性化」の5部会から構成されています。主な活動としては、桜や漆の植樹・維持管理、綿の普及事業、地域住民向け講演会、田中玄宰の墓前整備といった幅広い内容を行っています。年間のべ約400名を超える地域住民が会員やボランティアとして参加していることも特長です。桜部会では、立ち上げから17年間で40種750本を植樹、早咲きから遅咲きの八重桜系統まで多くの品種を植樹していて、長期間楽しめることを目標に活動を進めています。
■「会津産の漆で会津の漆器をつくる」ための活動と伝統工芸・会津塗の再興
※下草刈り作業後に会津塗を使って昼食をとる様子
近年、「はるなか」の活動の中でも、新たな展開を見せているのが漆部会の活動です。かつて会津では百万本を超える漆が育てられていました。しかし、昭和の終わりには漆液の生産がほとんどなくなってしまいました。再び会津を漆の里にして、「会津産の漆で会津の漆器をつくりたい」と願った「はるなか」の会員たちは、開墾や土壌改良に努め、2006年に300本の漆の木を植樹しました。その後も、新たな土地での植樹と月2回の下刈り作業を地道に続けた結果、2021年に初めて60本の漆の木から13キロの漆液を採取することができたそうです!
※ぐい呑みデザインの選定会議の様子(2021年)
漆の木を植樹してから15年越しに採取した念願の漆液は、20~30代の若手職人7名の手により、ぐい呑み550個の製作に用いられました。まさに、長年の夢が実現した瞬間です!今後は、活動の中で得られた漆液を使った「はるなか」ブランド商品を広めるシステムをつくり、ベテランから若手へ仕事やノウハウを継承できる場にしていけるように取り組んでいます。
※若手職人による漆器制作の様子(2022年)
会津の恵まれた気候を生かした里山づくりを進め、地域の伝統工芸・会津塗の再興にも励む「はるなか」の取り組みから、会津の持つ豊かな地域性が感じられます。また、鶴ヶ城の城下町として栄え、歴史を重んじる風土が根付く会津では、郷土の偉人に光をあてることもごく自然なことだったようです。
田中玄宰という先人の故郷への思いを継ぎ、地域に根差した活動を展開する「はるなか」が掲げる夢、「桜の名所、漆の里"会津"」をすぐそこに感じますね♪
これからもサントリーは地域文化の発展を応援していきます。
▼関連リンク
・サントリー文化財団「地域文化賞」のサイト
・第44回 サントリー地域文化賞決定 (ニュースリリース)