【第40回サントリー地域文化賞】国内最大級の遺跡を守り次世代に伝える「むきばんだ応援団」
鳥取県にある国内最大級の弥生時代の遺跡「妻木晩田遺跡(むきばんだいせき)」。
現在は「県立むきばんだ史跡公園」として公開されていますが、遺跡保存の決定前からこれまで、考古学者だけでなく多くの市民たちが遺跡を守る活動をしてきました。
およそ20年にわたって活動を続けてきた「むきばんだ応援団」は、地域住民が中心となって遺跡の保存運動や啓蒙普及活動を行っています。地域の文化と歴史の重さを次世代に伝えている点が高く評価され、「第40回サントリー地域文化賞」を受賞しました!
■「サントリー地域文化賞」とは
※昨年の授賞式の様子
サントリー文化財団は、全国各地に広がる地域文化活動の発展・向上を応援したいという想いから、地域の文化向上とその発展に貢献した個人や団体に「サントリー地域文化賞」を贈呈しています。
「サントリー地域文化賞」は、1979年の創設から30年以上続く歴史ある賞で、第39回(2017年度)までの総数は209件に達しました。音楽、美術、歴史・伝統継承・国際交流など、様々な活動をしている団体に顕彰しており、今回(2018年度)で第40回を迎えます。
鳥取県では、1991年の永井伸和氏の受賞以来、久々の受賞となりました。
■「むきばんだ応援団」とは
霊峰として名高い鳥取県西部にある大山は、その山麓に古墳時代や白鳳時代の遺跡があることが古くから知られていました。1995年には、リゾートやゴルフ場などの開発にともなう発掘調査で、900もの建物跡のある国内最大級の弥生時代の遺跡が発見されました。
1997年、この「妻木晩田遺跡」に、方形墳丘墓の四隅がヒトデのように飛び出した特異な形の大型墳丘墓(「四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)」)が数多くあることが報じられ、それが山陰に特徴的なものであったこともあって、地域住民や考古学研究者から遺跡の保存を求める声が大きくなりました。
市民団体が保存の署名を集め、文化庁も保存の意見を県に伝えるなど後押ししましたが、開発計画は県の誘致事業であったため、保存の結論は先送りにされてきました。
そのような状況の中で、1999年2月に、保存活動を展開してきた市民団体、考古学者、地元経済界などが発起人となって「むきばんだ応援団」が結成されました。
応援団は、遺跡の保存活用の方策を提案し、保存のための募金を全国に呼びかけるなど、「妻木晩田遺跡は、吉野ヶ里、三内丸山と並ぶ三大遺跡である」というアピールを通じて妻木晩田の知名度向上につとめました。
こうした活動が認められ、4月に県は方針を変更し、遺跡の保存・活用を決定しました。
■「むきばんだ応援団」の主な取り組み
保存決定後の「むきばんだ応援団」は、妻木晩田遺跡の重要性を伝えるために、市民講座「むきばんだやよい塾」や、自然観察会「むきばんだを歩く会」を発足。機関紙「やよい塾通信」や「応援団通信」を発行しています。
「やよい塾」には、大阪の近つ飛鳥(ちかつあすか)博物館、奈良文化財研究所などの全国の研究者が講師として招かれ、市民への学びの場の提供や研究者たちの同遺跡への理解を深めることに繋がっています。
遺跡の今後の調査や活用についての定期的な集まりは、専門家だけでなく、「むきばんだ応援団」やボランティア団体なども参画して行われています。
遺跡の価値と魅力を周囲に伝え、様々な活用法を提案し続けてきた「むきばんだ応援団」。これまで一貫して、考古学者だけでなく多くの市民たちが参画して遺跡を守り活用してきたことは、とても先駆的な取り組みです。
次世代にも誇れる遺産であり続けるように、これからも大切に守っていきたいですね。
サントリー文化財団はこれからも地域文化の発展を応援していきます!
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