【第39回サントリー地域文化賞】古来の製鉄作業を再現・体験の場を提供している「新見庄たたら学習実行委員会」
皆さんは「たたら」をご存知ですか?
良質な砂鉄を産出する日本で、古くから営まれてきた独自の製鉄のことです。
そんな「たたら」の製鉄作業を体験する場を提供してきた岡山県新見市の「新見庄たたら学習実行委員会」が、「サントリー地域文化賞」を受賞しました。
古来の製鉄作業を体験することを通して、地域の文化と歴史を知り、ものづくりの原点に触れることのできる場を提供してきた活動が評価されました!
■「サントリー地域文化賞」とは?
※昨年の授賞式の様子
サントリー文化財団が、地域文化の発展に貢献した個人や団体を顕彰する「サントリー地域文化賞」。
全国の地域文化活動の発展・向上を応援したいという想いから、音楽、美術、歴史・伝統継承、国際交流などの活動を対象に顕彰し、第38回(2016年度)までの総数は204件、1979年の創設から30年以上続く歴史のある賞です。
「新見庄たたら学習実行委員会」は本格的な中世「たたら製鉄」を忠実に再現し、他にはない一般市民も参加できる場を提供したことが評価されました。岡山県内では、2006年の「大原美術館ギャラリーコンサート」以来の受賞となりました。
■「たたら」とは?
中国地方で産出される良質な砂鉄と木炭を粘土製の炉に入れ、ふいごで風を送って鉄を精錬する「たたら」。古来の製鉄法で、日本刀にも用いる玉鋼(たまはがね)という貴重な鉄も、この方法で作られています。
古くから営まれてきた「たたら」ですが、江戸時代後期になると近代的な製鉄技術が導入され、少しずつ衰退。戦後、「たたら」による製鉄を行っていたのは、刀剣などをつくる島根県の日本美術刀剣保存協会の一箇所のみとなりました。
■新見市における「たたら」
市内各所に「たたら」の遺跡が存在する新見市では、地域の重要な産業であった「たたら」について知りたい、自分たちでもやってみたいという声が高まりました。
1993年に市の青年会議所が中心となって、島根県から指導者を招き「たたら」の再現操業に踏み切ります。その後、市のイベントとして毎年1回「たたら」の操業を行い、2007年からは市教育委員会の管轄のもと「新見庄たたら学習実行委員会」が発足。
その後、市民が地域の文化と歴史を知るきっかけを与えるための、様々な活動を行っています。
新見市のように本格的な「たたら」を忠実に再現し、一般市民も参加できる貴重な場を設けることは珍しいそうです。
また、製鉄の技法の多くは、非公開で継承されてきたために不明なことが多く、研究者がこの地を訪れて協力するとともに、技法の解明・研究に役立てています。
■「新見庄たたら学習実行委員会」について
「新見庄たたら学習実行委員会」では、毎年10月頃に行われるたたら操業イベント開催に向けて、5ヶ月前から薪の調達や薪割りの準備を始め、さらに粘土製の炉を造るなど下準備を行っています。
当日は、安全と製鉄の成功を祈願する神事を行い、炉に火を入れて、操業を開始。市内外から集まった延べ500名が交代で、一昼夜かけてふいごで炉に送風します。
砂鉄が鉄に変化していく過程で、炎の色が微妙に変わっていく姿はとても神秘的!炉の底から、赤く燃える鉄が火花を散らしながら地面に流れ出す様子に、参加者からは大きな歓声が上がります。
作業効率が求められる現代において、古来の「たたら製鉄」を再現するという壮大な取り組みは、地域の人々の絆と誇りを生み出す貴重な場となっています。
これからもサントリーは地域文化の発展を応援していきます!
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